作品について
【作品について】 淡いピンクの背景に、灰色・水色・朱赤・黒・ベージュなどの色面が鋭角的に組み合わされ、一匹の猫の姿が浮かび上がる円形キャンバスの作品。画面左側には朱色の目と赤白の縞模様をもつ顔が構成され、右上から画面下部にかけて灰色と水色のカーブが尾のように巻き、右下には肉球のある黒い足がぐっと突き出している。猫の体は複数の角度から捉えた形態が一つの画面に再構成されており、見る角度によって異なる表情を読み取ることができる。 【キュビズムと円形キャンバスについて】 岡﨑実央は、ピカソやブラックが発展させたキュビズムを用いて「様々な角度から見た対象の形を1つの画面に収める」手法で制作を行っている。プロレスや格闘技を主たるモチーフとする作家だが、本作では「ZELDA」という名をもつ猫を同じ技法で描いている。描く対象の特徴を抽出し、優先順位をつけて画面に収めるというプロセスが、猫の大きな臀部(BIG BUTT)、肉球、縞模様の顔といったパーツの強調に表れている。また、描く競技に合わせてキャンバスの形状を変えるという制作方針があり、相撲では丸いキャンバスを用いるとされるが、本作でも円形(トンド)が選ばれている点が興味深い。 【見どころ】 タイトルの「BIG BUTT」が示すとおり、画面右上の灰色の大きな円弧が猫の臀部にあたる。よく見ると、平面的な色面の重なりの中に、毛並みを思わせるギザギザの輪郭線や、耳の尖り、肉球の丸みといった猫固有の身体的特徴が的確に配置されている。フラットに塗り分けられた色面の間にはグレーの下塗りがわずかに残されており、これは作家が「白黒つけないグレーな部分」をあえて色彩に反映させる手法として用いているものである。ポップな色調と幾何学的な構成の中に、対象への観察眼が凝縮された一作である。
岡﨑実央の作品