作品について
銅や真鍮、銀を用い、鍛金・彫金の技法で蝸牛と紫陽花を精緻に造形した三足香炉。原田武は幼少期に自然の中で動植物を観察した記憶を「郷愁」として作品に結実させており、本作でも梅雨時の湿った空気や静かな時間の流れが金属の質感と化学着色による色彩のうちに凝縮されている。香炉という実用の器にモチーフを落とし込み、外観からは用途を感じさせない仕掛けもまた、作家が大切にする「気づいた時の楽しさ」を体現している。 銀、銅、真鍮から成る三足香炉。蓋上には蝸牛が這い、胴部には紫陽花の意匠が鍛金・彫金によって刻まれる。硫化カリウムや火焔酸化による化学着色が、梅雨の湿った空気と五月の晴れ間を金属の表面に定着させている。実用の器としての機能を外観に隠し、手に取って初めて香炉と気づかせる構成は、幼少期の自然観察の記憶を「用の美」へと昇華させる制作姿勢を端的に示す。
原田武の作品